まいにち青海島
ね、青海島っていい名前だと思わない?
なんてったって「青い海の島」ですよ。こんなところ、ありそうでなかなかないでしょ。
この度、結構長いこと住んでいた長門市から郷里へ帰りました。
みなさま、お世話になりました、ご迷惑をおかけしました。ほんとにありがとう。
ダイバーとしても、インストラクターとしても、ガイドとしても、写真撮る人としても、まったくのゼロからだったのに、いやー、あんまりにも楽しくて幸せだったので自分でも思ったより長いこと、青海島のある長門市から離れられなかった。
「海がやりたくて青海島にすんでるんですぅ!」なんていうと、皆様に親心でこんな所より沖縄で働いたほうがいいんじゃないのって心配していただきました。ははは、・・・ですよねー。でも私は青海島が良かったんです。はっきり言って地味な日本海側のどこにでもありそうな小さな漁師町、小さな浜辺がダイビングできるようになっていて、ダイバーは歩いてざぶざぶ海に入っていく。潜水区域もそんなに広くありません。サンゴ礁もないし、カラフルなお魚もそんなにいない。若くももない私には広すぎずちょうどいいキャパシティだったのかもしれません。
おまけに長門に住んでからはほかの海に全く潜りにいかなかったので井の中の蛙ってやつでした。
でも私は、このささやかな浜辺になんていうかすごく可能性を感じたのです。
海藻揺れる温帯の穏やかな海に暮らす生き物たち。
さわやかな秋は季節来遊コレクションや、スパーマニアックな浮遊生物の開拓。凍える冬は生態観察で物語集め、ぶさかわいいのに熱いクサウオの卵保護、美しいチャガラたち、宝石みたいな卵を守るアイナメ。夏は光のカーテンがゆらめく洞窟でのんびりしたり大型クラゲと泳いだり、もちろんムラサキダコ探し!妖艶なヴェールをいっぱいに広げたムラサキダコの女王様に見下ろされるのは今でも私の夢!ムラサキダコはたくさん見たのに、いまだにこれっていう作品が撮れなかったのが悔しいなぁ。
それから春!青海の赤潮は圧巻、海の中から見ると海藻の林が燃えてるみたいだったり、緑やピンクの層になっていたり幻想的なんだよ。忘れちゃいけないのが浮遊生物。これは最新で最高にエキサイティングなジャンル。毎年のように新しい発見があって、これからも浮遊に取り組む人はきっとパイオニアの一人になれるのだ!
ああそれからそれから、青海島の生き物の話をすると長くなる。この小さな浜辺は地球を覆う広大な海洋と繋がっていると強く感じられる思いがけない生き物との出会いもたくさんありました。
なによりこういうことの「おもしろさ」を教えてくれる人がいたっていうのが大きかったのです。シーアゲインさんをお手伝いさせてもらって、巨匠の皆さんをはじめ、SAゲストの皆さま、もちろんたかやんさま、他店でも青海島で潜ってるみんな。いろんな人に育ててもらいました。これってすごいことだよね。
タイミングもありましたが、私は他でもない青海島が良かったの。
さあ言うぞ。
恥ずかしいのが苦手な方は読むのはそろそろおやめになって、アブナイから。
いやもう海のない田舎に帰ってからのありさまは笑える。
ヘロヘロすぎて自動ドアには感知されないわ、あいてないドアに激突するわ、おでこ強打で一瞬意識とぶわ。
あまりのおでこイタにナミダがちょちょぎれ、鼻がキューンとなってくる。
おでこイタのせいで、気がゆるむと長門のことがよみがえる。
青海島は、私の青春だった。
枕元にはプランクトンの本。
理解できてもできなくてもずっと眺めてた。
春に浮遊を見にたくさんのひとが楽しく集まるまぶしさも、
オフシーズンの誰もいない寒い日の船越の猫のお尻の丸さも、
棚田のマジックアワーのなかで最初の漁火が一番星みたいに灯るのをまつのも、
あのタコは私がいいの撮るんだと息まいて潜る前に泳ぎまくって空振りするのも、
ずっと探していた生き物を二度と会えないかもと撮るときの手が震えるほどの緊張も、
冷え込む朝のやわらかくたちのぼる海霧に海の生きている体温を思ったのも、
生き物に出会ってあなたを呼びに、ただ夢中で泳ぎ、ベルを鳴らし、走った日も、
それから、これといってなーんもおらんかった日でさえも、
全部、たからもの。
だからって何にもならないんだけど、だけど、だけど。
年増のアオハルなんて、笑える。
バカじゃないの?
でもたくさんのすてきな人たちに会えた。
あなたに会えたから、よかった。
ね、青海島っていい名前だと思わない?
**********
「まいにち青海島」
ありがとう!
くみ
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ただ、このどこにでもあるささやかな海辺にたたずんだ日々だったなぁ。
とびこんで、もがいて、必死で、バカで、自由な毎日。
水面っていう、薄い境界線を時間の限り超えてみたかった。
どれほどの価値があったか、無駄だったか今はよくわからない。
海はひとつ、ここで見たものはこれからの海につながるはず。
きっときっと。
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アンコウ科一種の卵帯
アンコウ科の一種の卵帯
山口県長門市青海島 船越 2017年11月3日
今日は浮遊ほとんどいませんでしたが、アンコウ科の一種の卵帯に会えました。
梱包資材のプチプチが薄ーくもろくなったような卵帯は複雑に折り重なってどれくらいの大きさか測れないのだけど、幅2m、いや3m以上はあるかもしれない。今まで見た中で一番大きくきれいな状態のシートだった!近づいてみるとふちに目と背骨ができ始めていました。「黒い模様が三つだとキアンコウ」と思っているのだけど三つではないようなのでキアンコウではないのかも、まだ模様が出てないのかもしれないしなんとも言えないかー。
まだ中のちびちゃんたちが育っていないので卵の栄養のような部分が丸くツヤツヤで、見上げると、青空が透けてキラキラのビーズみたいできれいだったよ。
ちびちゃんたち、キアンコウじゃなくてもアンコウの仲間なら幼な姿はかわいこちゃんに違いない。もうちょっと育ったら青海島をにぎわせてね。
お粗末な動画ですが雰囲気だけでも。
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秋の浮遊を振り返る
ハナギンチャク類のアラクナクチス幼生 2017年9月
いやー、今年は秋の浮遊は空振り、夏の終わりくらいまではなかなか面白かったんだけど残念でした。今年の様子だけみて秋の浮遊っていうけど、どんなんよって思われるかもしれませんので私的秋の浮遊を記しておきましょう。
秋の浮遊は極小かつ未開の分野。
運、経験ともに不可欠で究極に難しく、最高にエキサイティングなシーズンでございます。
秋の定番といえばハナギンチャク類のアラクナクチス幼生、ウキヅノガイ、エフィラクラゲの仲間などです。ギボシムシのトルナリア幼生も秋。それから浮遊の本には外さずに掲載されてちょっと有名になった感じのホシムシのペラゴスフェラ幼生も秋に期待するいきものですね。
私の中では浮遊の秋って9月から12月のイメージ。この間にはエビクラゲ、タコクラゲなどのワイドに映えるものもいたなぁ。ムラサキダコは船越がしけるから会えないだけで冬にも近くにいると思う。
魚類はウシノシタの仲間の幼魚が時々、マハタの子も一度だけ会いました。
マハタらしき幼魚 2014年11月
ウミフクロウのベリジャー幼生も時々。
ササノハウミウシも記録がありますね。この子たちはやっぱり「流れによる」かな。
ササノハウミウシ 2014年10月
写真いいのないけど秋にヒョウタンハダカカメガイっぽいの見たことあります、撮りなおしたいなー。
すごく小さなヤサガタハダカカメガイや、マサコカメガイなんかも見かけます。
一度しか見たことないけどこんな子もいた。ヤサガタではない様子。
ハダカカメガイの一種 2014年12月
黄色と黒のドット柄のこの子は最近和名が付いた種だと思うのだけどいかがでしょう。
オタマハダカカメガイ、だと思う。 2014年11月
とってもあきらめの悪い私はまだ秋の浮遊もあのタコもあきらめていなかったりします。
今の予報では船越入れそうな11月初めの連休は空振りか否か、どっちにしてもいってくるぜ!
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ミジンベニハゼ
ミジンベニハゼ
山口県長門市青海島 紫津浦 2017年10月21日
子供さんや犬猫の写真ってズルいくらいかわいい。
しかしながら、子供さんや犬猫は、思うようにポーズをとってくれないし意外にかわいく撮るの難しいのかもしれません。
ニゴニゴの紫津浦の深場にいる小さなハゼ、ミジンベニハゼよ。
あなたは本当にかわいいね、黄色くて小さくて、たいていお家にペアで暮らしていて、大きな目もまたかわゆい。
しかしながら、子供さんや犬猫ぐらい思うようにポーズをとってくれないのでありました。
今年はミジンベニハゼたくさんいるようで、瓶や缶、貝殻などに数か所入っており、中でもペアでいるものはやっぱり物語があって楽しい!
お家の中から外の様子をうかがって2匹で「こわくないかな」ってひそひそ話してるペア、一匹が懸命に巣穴の掃除をしてるのにもう一匹は知らん顔しているペアなど、カップルそれぞれに性格があるみたいです。
一度は卵のハッチアウトの瞬間を拝見したいものです。
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